コラム

住宅購入にライフプランの有料FP相談は不要?(住宅価格決定編)

住宅購入を検討する際に、はじめてライフプラン(人生設計)の必要性について考える方も多いのではないでしょうか。
今まで家賃を払っていたので、それよりも月々の返済額が下がるから大丈夫と購入を決断する方(パターン①)や住宅販売の営業の方が作成してくれるローン完済までのキャッシュフロー表を確認して購入を決心される方(パターン②)もいらっしゃいます。
さらには、ファイナンシャルプランナー(以下、FP)の有料FP相談を活用して、ライフプランを立てる方や見直す方(パターン③)もいらっしゃいます。
お金をかけてまでライフプランの相談をするメリットはあるのでしょうか?

現在の家賃と比較して決めても大丈夫?(パターン①)

このように考える方は、どうせ同じ金額を払うなら「家賃」としてよりもマイホーム(資産)として残るようにローンを組んで購入した方がお徳と考える方が多いようです。

こういった考え方で注意すべきポイントは、2つあります。

一つは、住宅を購入するとローン返済額以外に、「固定資産税」「火災保険料」などの住宅関連費や「管理費」「修繕費」といった賃貸では大家さんが負担していた「見えなかった」費用をご自身で負担することになるということです。これらが年間30~50万円あった場合、30年で900~1,500万円の想定外の支出が生じることになります。

もう一つは、現在支払っている家賃は、一生涯で見たときに、住居コストとして妥当な水準なのか?(30~35年間支払い続けるコストとして妥当か?)ということです。
お子さんが生まれるタイミングで住宅の購入を考えるケースが多いようです。
この時期は、夫婦2人で働いていて家計にゆとりを感じているご家庭が多いようです(しっかりと住宅購入資金の頭金準備、将来の教育資金準備まで想定して積み立てている家計は別ですが)。
この時期の支出感覚で長期間の住居コストを判断すると失敗する可能性があります。一般的に、家計の支出のピークは最初の子供の大学受験~最後の子どもが大学を卒業するまでの期間だからです。ライフプランを立ててキャッシュフロー表によって分析した場合、この期間に年間収支の赤字がつづき、大きく貯蓄を減らす(なかにはご自宅を手放す)ご家庭もあります。

生涯の収入・支出を俯瞰(ふかん)せずに長期間にわたる将来の支出を固定する恐さは、知っておいて欲しいと思います。既に購入された方は、できるだけ早くキャッシュフロー表を作成し、将来貯蓄がマイナスになることがないか確認し、危ない場合は、すぐに適切に対策を取ってもらいたいと思います。

キャッシュフロー表で確認すれば大丈夫?(パターン②、③)

キャッシュフロー表を作成すると、「年間収支」と「貯蓄残高」の30~50年間の推移を金額で確認することができます。

ある時期に「年間収支」がマイナスになったとしても生涯を通じて(100歳ぐらいまで)「貯蓄残高」がマイナスにならなければ基本的に大丈夫と判断できます。ただし、シミュレーションに使う「収入」や「支出」が「ある程度」正確であることが大前提です。

例えば、収入に使う数字が「額面金額」なのか「手取金額」(所得税・住民税、社会保険料を差し引いた額)なのかによって年間数十万円ズレが生じます。
同様に「支出」に列挙した項目に不足があった場合にもズレが生じます。
月額で3万円誤差が生じている場合、30年間で貯蓄残高に1,000万円以上の誤差がでます。

一生涯で貯蓄残高が一番少ない時期に「貯蓄残高900万円を確保できたキャッシュフロー表」を見た場合と「貯蓄残高マイナス100万円のキャッシュフロー表」をみた場合とでは、住宅購入の判断が変わってくるのではないでしょうか。
1,000万円の誤差を取り戻すには、月5万円ずつ節約をしても200か月(約16.7年)かかります。住宅ローンの完済が65歳だとするとシミュレーションの誤差を穴埋めできるのは、80歳までかかる計算になります。住宅購入が「人生の3大資金」のひとつに数えられ、ライフプランで最も重要な意思決定と言われる理由もうなずけるのではないでしょうか。

ここで注意いただきたいのは、営業担当者が作成するキャッシュフロー表には、「正確さ」を追求する動機が働きづらいということです。
収入に比べて支出を把握するのは手間がかかります。支出には源泉徴収票や確定申告書のような全額を把握できる明確な資料があるわけではなく、項目も多岐にわたります。すべてをヒヤリングするのは時間がかかりますし、時間をかけて支出額の増加が明らかになれば、購入可能な住宅価格も下がってしまう可能性があります。

安心・納得できる「住宅購入」には、多少の手間とコストをかけても「精度の高い」オリジナルのシミュレーションが必要です。簡単なヒヤリングや統計データを用いた簡易のシミュレーションでも大丈夫な方は、生涯通じて貯蓄残高が3000万円を下回らないような方と言えるでしょう。

精度の高いキャッシュフロー表は予算として活用できます(パターン③)

有料FP相談による精度の高いオリジナルのキャッシュフロー表を作成するメリットは、安心感や納得感を得られるだけにとどまりません。

精度の高いシミュレーションは、「予算」として活用できます。
キャッシュフロー表に記載した支出項目の各残高を意識して生活していただくことで、「確実」にキャッシュフロー表の貯蓄残高を確保できるようになります。毎年、預金等の残高合計とキャッシュフロー表の「貯蓄残高」を対比することで確認できます。

もしズレが生じた場合は、キャッシュフロー表(計画)に誤りがあったのか、お金の使い方に特殊要因があったのか振り返り、修正していきます。
これを繰り返すことで
計画→実行→チェック→修正→計画・・・
というPDCAサイクルを回せるようになり、確実にキャッシュフロー表の計画(ライフプラン)を実現します。
精度の高いキャッシュフロー表は、企業が企業活動を管理している「予算」と同様に家計管理の強い味方となります。

手間とコストのかかるキャッシュフロー表を「判断材料」としてだけ使用するのは、もったいない話です。「計画」を絵にかいた餅に終わらせないためにも「予算」としてライフプランの実現まで手元において活用していただきたいと思います。
活用いただければ、「あなたオリジナルのライフプランを金額として数値化したキャッシュフロー表」には、数千万円の「価値」があることに気づいていただけると思います。

ライフプラン相談研究所は、精度の高いお客様オリジナルのライフプランの作成をお手伝いします。

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公開日:2022年6月28日
更新日:2023年9月30日

CFP🄬 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

樗木 裕伸(おおてき ひろのぶ) 

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